世界三大紅茶とは?
世界三大紅茶とは、中国の祁門紅茶(キーマン)、インドのダージリンティー、スリランカのウバティーの3つの紅茶のことを指します。それぞれが産地ごとの特徴を持ち、世界中で高く評価されています。
これらの茶葉の産地は、中国の安徽省祁門県(キーマン)、インドの西ベンガル州(ダージリン)、スリランカのウバ州です。特にキーマンは、中国十大銘茶の一つとしても知られています。
「世界三大紅茶」と聞くと、なんだか特別ですごい印象を受けますよね。
この「三大紅茶」という言葉は、今から約100年前に作られました。1915年のパナマ・太平洋万国博覧会に出展され、表彰された紅茶が「三大紅茶」と呼ばれるようになったんです。
このように元々は、品質の良い紅茶を表彰するための言葉でしたが、現在においては日本以外でこの呼び方を使うことはほとんどなくなりました。日本でもこの言葉を使うときは単なるキャッチコピーとして使うことが多いようです。
ですが「三大紅茶」自体の価値がなくなったわけではありません。
日本では「ダージリン」は広く知られていますが、「ウバ」や「キーマン」は紅茶専門店以外ではあまり見かけません。それでも、一度これらを味わってみれば、なぜ「三大紅茶」に選ばれたのか、その理由が分かりますよ。
世界三大紅茶の一覧と特徴
「紅茶のシャンパン」と称されるダージリンティー(Darjeeling Tea)
ダージリン紅茶は、インド北東部、西ベンガル州北部のダージリン地方で作られる紅茶で、世界中の紅茶の約2%を占める定番の高級紅茶です。
しかし、実はとても希少です。インドで生産される茶葉のうち、ダージリンはわずか1%以下。さらに、「ダージリン」を名乗ることを許されているのは西ベンガル州の87か所の茶園で作られた紅茶だけです。
その特徴は、澄んだ美しい水色と、マスカットのような香り「マスカテルフレーバー」です。この香りが強いほど品質が高いとされ、紅茶の中でも「紅茶のシャンパン」と呼ばれるほどの気品があります。
寒暖差が激しいダージリン地方の過酷な環境が、この独特の風味を生み出します。
ダージリンの味わいは、収穫時期によって大きく異なり、以下の3つに分けられ、それぞれ異なる風味を楽しむことができます。
セカンドフラッシュ(夏):濃厚で香り高く、マスカテルフレーバーが際立つ
オータムナル(秋):まろやかで落ち着いた風味。
ダージリンの香りを作る重要な要素は、「ウンカ」という虫の存在です。この虫が茶葉の汁を吸うと、茶葉は「ファイトアレキシン」という抗体を生成します。この抗体が加工中に反応し、マスカットのような香りを作り出します。

台湾茶「東方美人」の香りも同じ仕組みで生まれます。
スリランカが誇るウバティー(Uva Tea)の魅力
ウバティーは、スリランカのウバ地方で採れる高品質な紅茶で、セイロン紅茶の中でも特に有名な存在です。セイロン紅茶は栽培地の標高によって「ハイグロウン」「ミディアムグロウン」「ローグロウン」の3つに分かれますが、ウバティーは海抜1800m以上の地域で栽培される「ハイグロウン」の代表的な紅茶です。
ウバ茶の特徴は、しっかりとした香りと風味にあります。「ウバフレーバー」と呼ばれる、バラやスズランのような甘く刺激的な香りが魅力で、ほんのりメントールを感じる独特の香りも特徴的です。この個性的な香りは、紅茶の世界ではウイスキーに例えられることもあります。
スリランカは現在では紅茶大国として知られていますが、かつてはコーヒーの国でした。しかし、19世紀半ばにコーヒーの木がサビ病によって壊滅的な被害を受けたため、イギリスの統治下で紅茶栽培が始まり、ウバ茶はスリランカ紅茶の歴史の先駆けとなりました。

世界的ブランド「リプトン」の創始者サー・トーマス・リプトンも、初めて手掛けた紅茶としてウバを選んでいます。
中国が生んだ高級紅茶、キーマンティー(Keemun Tea/祁門紅茶)の芳香
キームン紅茶は、中国安徽省祁門県周辺で清の時代から作られている、歴史ある高級紅茶です。その上品な味わいと香りから「紅茶のブルゴーニュ酒」とも呼ばれ、特にイギリスではファンが多い紅茶として知られています。
日本では「キームン」と呼ばれますが、中国では「祁門」と表記されます。キームン紅茶は発酵度が高く、「キームン香」と称される蘭の花のような甘い香りと、果物を思わせる優しい甘みが特徴です。その香りと風味は、高級品ほど繊細で豊かであり、驚くほどの高値が付くこともあります。
水色は赤銅色で明るく澄んでおり、見た目にも美しい紅茶です。その上品な香りと味わいから、日本でも非常に人気があります。
キーマン紅茶の味と香りは、等級によって異なります。高級な茶葉は、蘭やバラ、リンゴのような甘い香りが特徴で、渋みや苦みが少なく、甘みと旨味、そして深いコクが楽しめます。一方、低級な茶葉は香りが弱いため、香りを付けて販売されることがあります。
この紅茶が特別な香りと味を持つ理由は、生育環境にあります。祁門県の茶園は森に囲まれた山岳地帯にあり、雨や霧が多く、湿度が高い上に気温も低い環境です。日光が少ないため、茶葉は旨味成分をたっぷりと蓄え、この地域ならではの芳醇な香りと味わいが生まれるのです。
最高級のキーマン紅茶は非常に高価で、かつては上流階級の人々に愛されていました。イギリスのヴィクトリア女王やエリザベス女王、アメリカのルーズベルト大統領もキーマン紅茶を好んだと伝えられています。また、英国王室では、女王の誕生日をキーマン紅茶で祝う伝統があるそうです。