花茶 (ホアチャ)の魅力 | 種類・特徴・淹れ方を徹底解説

中国茶にはさまざまな種類がありますが、その中でも花を使った特別なお茶があります。花を使って香りを付けたものや、乾燥させた花そのものをお茶にしたものがあり、これらを総称して 花茶 と呼びます。茶葉の種類に関係なく、緑茶、青茶、紅茶などを基に作られることが多く、花の種類や製法によって多彩なバリエーションがあります。

花茶とは

花茶は、お茶の吸着性を利用して芳しい花の香りを茶葉につけたものです。中国語で「ホアチャ」と発音されます。(huacha)花茶は、香りや味わいだけでなく、乾燥した花が茶葉に混ざったりお湯に浮かんだりする美しい見た目も魅力で、特に目にも楽しめるお茶として親しまれています。

花茶は、中国や台湾の茶文化の中で広く楽しまれる特別な存在であり、その魅力は香り、味、そして華やかな見た目にあります。

花茶の誕生と発展

花茶の起源については諸説ありますが、現代の製法に近い形になったのは元代からとされています。明代の茶書『茶譜』には、「花弁と茶葉の割合は1対15にするべき」という記述があり、この頃に現在の製法が確立されたと考えられます。

中国では香りを楽しむ文化が古くからありましたが、花茶が商品として本格的に開発されたのは清朝の咸豊年間(1851-1861年)に福州で始まったとされています。当時、嗅ぎ煙草が流行しており、香り付き煙草の成功を見た茶商が、香りをつけたお茶=花茶の製品化を思いつきました。当初は安価な緑茶を使った商業的な商品として始まりましたが、その後人気が高まり、現在では高級茶葉を使用した多種多様な花茶が生産されています。

主な花茶の種類

ジャスミン茶(茉莉花茶)

花茶の中でも特に有名なのがジャスミン茶です。「茉莉花茶(まつりかちゃ)」と書かれるこのお茶は、中国茶や緑茶にジャスミンの花の香りを移した中国茶の一種です。

「花茶」といえばジャスミン茶を思い浮かべるほど、ジャスミン茶は花茶を代表する存在ですよね。ジャスミン(茉莉)の中でも、以下の品種が花茶に使用されます

  • 茉莉(まつり)
  • 大花茉莉(だいかまつり)
  • 白花茉莉(はっかまつり)

これらの品種をさらに花弁の構造で分類すると

  • 単弁茉莉(花弁が単層)
  • 双弁茉莉(花弁が複層)
  • 多弁茉莉(花弁が多層)

主に双弁茉莉が花茶に使用されますが、地域によっては「単弁茉莉」(福建省長楽県)や「多弁茉莉」(四川省)も少量生産されています。

お湯を注ぐと、ジャスミンの芳醇な香りが広がり、リラックスタイムにぴったりの飲み物です。一方で、味わいは意外とすっきりとしており、脂っこいお肉や炒め物などの中華料理とも相性抜群で、食後の口をさっぱりとさせてくれます。

菊花茶

乾燥させた菊の花を使用し、清涼感のある味わいで、漢方としても利用されます。 

菊花茶は、食用の菊の花を天日干しで乾燥させた花茶です。ジャスミン茶のように緑茶に花を加えるものとは異なり、菊の花だけを使っているため、カフェインを含まないお茶として親しまれています。

このお茶は中国や台湾で広く飲まれており、食事のお供や漢方の一部としても利用されています。飲むと菊の香りがふわりと広がりますが、クセがなくほんのりとした甘さが感じられるため、非常に飲みやすいお茶です。

また、急須や湯呑みの中で菊の花がふんわりと開く様子はとても可愛らしく、見た目にも楽しめるのが菊花茶の魅力です。

 

工芸茶

工芸茶は中国茶の一種で、茶葉と花を組み合わせて作られた芸術的なお茶です。お湯を注ぐ前は茶葉が丸い球体の形をしていますが、熱湯を注ぐと茶葉の中に隠された花がゆっくりと開き、美しい姿を楽しめます。

このお茶は、緑茶やジャスミン茶の茶葉を用いながら、乾燥させた花を中に入れ、糸で丁寧に縛って丸い形に成形して作られます。お湯を注ぐだけで、茶葉と花がふんわりと開花するのが特徴です。

工芸茶の味は、花自体の香りよりも緑茶やジャスミン茶の風味が主体で、すっきりとした味わいを楽しむことができます。使用される花には菊やマリーゴールド、ジャスミンなどさまざまな種類があり、それぞれ異なる美しさを持っています。

工芸茶を楽しむ際は、その開花する様子を視覚的に楽しむために、透明なグラスやガラス製のポットを使うのがおすすめです。お茶としての味わいと同時に、花が開く美しい瞬間を堪能できるのが工芸茶の魅力です。

玫瑰花茶(バラ茶):ハマナスのつぼみを乾燥させて作られ、華やかな香りと甘みが楽しめます。 
桂花茶(キンモクセイ茶):キンモクセイの花を用い、甘く芳醇な香りが特徴です。 

 

花茶の製造工程

花茶は、製品化されたお茶(主に緑茶)に花の香りを吸着させる工程を経て作られます。ここでは、代表的なジャスミン茶の製造工程を例に説明します。

1. 花摘み

ジャスミン茶用の花摘みは、開花したものではなく、その日の夜に開くつぼみを摘むことが特徴です。この方法により、花の香りが最も強いタイミングで使用することができます。

2. 薫花(くん花)

香りを茶葉に吸着させる主要な工程です。

積み重ね: 花と茶葉を交互に6~7層に積み上げます。
熱の発生: 花の呼吸熱で全体が約45℃に達すると、茶葉が香りを吸収します。
攤涼(たんりょう): 熱を均一にするため、積み重ねた茶葉と花を広げて冷却します(約1時間)。
この工程を「一くん」と呼び、所定回数(例: 一級品では3回、最高級品では7回)繰り返します。

3. 分離

「薫花」が終わると、茶葉から花を篩(ふるい)で取り除きます。これにより、茶葉に香りだけを残します。

4. 烘焙(焙煎)

茶葉を火で軽く焙煎し、香りを定着させると同時に余分な水分を飛ばします。

5. 乾燥

茶葉を完全に乾燥させて保存性を高めます。

6. 提花(ていか)

製造の最終工程で、新鮮な花を茶葉に混ぜ込み、香りをさらに引き立てます。一級品の場合、「三くん一提」となり、最高級品では「七くん一提」といった形式で行われます。

例えば…

一級ジャスミン茶の製造工程(例: 三くん一提の場合)

  1. 薫花
  2. 攤涼
  3. 薫花
  4. 攤涼
  5. 薫花
  6. 分離
  7. 烘焙
  8. 乾燥
  9. 提花

緑茶の種類と花茶の相性

花茶の原料となる緑茶には「炒青緑茶」と「こう青緑茶」がありますが、香りの吸着力が高いこう青緑茶が多く使われます。こう青緑茶を使用することで、花茶特有の芳しい香りをより明確に引き立てることが可能です。

花茶の製造工程は、花の香りをいかに効率よく、また丁寧に茶葉に吸着させるかに焦点が当てられています。特にジャスミン茶では、香りを何度も重ねる「薫花」と、仕上げの「提花」が品質を決定づける重要な工程です。この手間と工夫が、花茶特有の芳香と繊細な味わいを生み出しています。

花茶の美味しい淹れ方

花茶は香りと味わいを同時に楽しめるお茶で、リラックス効果や健康効果が期待されます。また、工芸茶と呼ばれる、湯を注ぐと花が開くように細工されたものもあり、視覚的にも楽しむことができます。 

花茶を淹れる際は、急須やグラスを事前に温めておくことで、花の風味をより引き出すことができます。以下は花茶を楽しむための具体的な手順とポイントです。

ジャスミン茶・菊花茶の淹れ方

ジャスミン茶や菊花茶は、90度ほどの熱めのお湯を使用するのがおすすめです。急須に1杯分(約3g)の茶葉を入れ、お湯を注ぎます。急須に蓋をして、2分ほどしっかり蒸らしてください。ただし、蒸らし時間が長すぎると苦味が強く出るため注意が必要です。

菊花茶の苦味や渋味が気になる場合は、砂糖やハチミツを加えるとまろやかな味わいになります。一方、ジャスミン茶はアイスティーとしても楽しめます。80~90度のお湯で茶葉を20秒ほど蒸らしてから氷をたっぷり入れたグラスに注ぎます。2煎目は40秒ほど蒸らして再度注ぎ、スプーンやマドラーでよく混ぜて完成です。

工芸茶の淹れ方

工芸茶を淹れる場合は、透明な急須やグラスを使うと見た目も楽しめます。まず、グラスや急須の底に少量のお湯を入れて温め、そこに工芸茶の粒を1粒入れます。その上から熱湯を注ぎ、蓋をして2~3分ほど蒸らしてください。ぬるめのお湯では工芸茶が完全に開かない場合があるため、熱湯を使うのがポイントです。蒸らしている間に、茶葉と花が美しく開きます。

煎を重ねて楽しむ
花茶は1回の茶葉で3~4煎目まで楽しめます。1煎目のさっぱりとした味から、回数を重ねるごとに深まる風味の変化をぜひ味わってみてください。花茶ならではの繊細な香りと優しい味わいが、心を癒してくれるでしょう。

保存方法

花茶は、他の中国茶と同じく高温多湿の場所を避けて保存することが大切です。特に花茶は湿気を吸いやすいため、できるだけ湿気の少ない場所で保管してください。一度開封したら、しっかり密封して湿気を防ぎ、風味を保つために早めに飲み切ることをおすすめします。

菊花茶や工芸茶などは繊細な作りのものが多く、崩れやすいため保存時には注意が必要です。重いものを上に置かないようにし、形を崩さないよう丁寧に扱いましょう。

花茶の賞味期限は比較的長く、工芸茶であれば未開封で1~3年、ジャスミン茶も未開封で1年半ほど持つものが多いです。ただし、開封後は空気や湿気に触れることで品質が劣化しやすくなるため、早めに楽しむのが理想的です。

花茶に含まれるカフェインと注意点

ジャスミン茶は、緑茶にジャスミンの花の香りを付けたお茶であるため、カフェインを含んでいます。また、工芸茶もジャスミン茶や緑茶をベースにしていることが多く、同様にカフェインを含みます。そのため、妊娠中や授乳中の方、また夜寝る前に飲む際は注意が必要です。

一方、菊花茶は菊の花をそのまま使ったお茶で、カフェインを含まないため安心して飲むことができます。ただし、キクアレルギーのある方は摂取を避けるようにしてください。

まとめ

多くの種類がある中国茶の中でも花茶は広く親しまれる存在で、日常的に飲まれるだけでなく高級品も多く生産されています。特にジャスミン茶は、香りの良さと飲みやすさから、国内外で非常に人気のある花茶の代表です。お気に入りの一杯を見つけてみてください

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