岩茶の王様 大紅袍のすべて

中国福建省の世界遺産「武夷山」で生まれる岩茶の中で、最も有名で「岩茶の王様」と称されるのが大紅袍です。その独特の香りと味わい、そして希少性や歴史的背景を持つ大紅袍は、中国茶の中でも特別な存在です。この記事では、大紅袍の魅力や名前の由来、伝説、味わい方などを詳しくご紹介します。

大紅袍とは?

大紅袍は、武夷山天心岩付近の「九龍窠(きゅうりゅうか)」で自生する茶木から採れる岩茶の一種です。その名が示す通り、「紅い衣」を意味し、古来より高貴な存在として知られています。

岩茶の中でも特別な存在

大紅袍は岩茶の中でも特に希少価値が高く、独特の「岩韻」を持つことで知られています。岩韻とは、岩場で育った茶葉特有のミネラル分によって生まれる後味で、口の中に深い余韻を残します。この風味は武夷山の環境でしか生まれないため、まさに「唯一無二」のお茶といえます。

大紅袍の産地:武夷山とその環境

武夷山は、福建省と江西省の境界に位置する山脈で、1999年にユネスコの世界遺産に登録されました。亜熱帯気候と年間約2,000mmの降雨量が特徴で、肥沃な土壌と適度な日陰が茶葉の栽培に理想的な条件を提供しています。

特に九龍窠は、岩壁に囲まれた険しい地形にあり、茶木が自生する環境としては最適です。この地形と気候条件が、大紅袍の特有の香りと味わいを作り出しているのです。

大紅袍の名前の由来と伝説

大紅袍という名前には、清の時代に遡る興味深い伝説があります。この伝説が大紅袍の高貴なイメージを形作り、岩茶としての価値をさらに高めています。

科挙試験に向かう秀才と奇跡のお茶

清の時代、科挙試験に向かう途中で病に倒れた秀才が、偶然通りかかった天心寺の住職に助けられました。住職が九龍窠の茶木から採れたお茶を飲ませると、秀才は回復し、試験に見事合格。主席合格者である「状元」となりました。

皇后を救った大紅袍

後に、この状元が持ち帰ったお茶を皇后に献上したところ、皇后の病が奇跡的に回復しました。これを喜んだ皇帝は、茶木に真紅の衣を掛けるよう命じたことから、このお茶は「大紅袍」と名付けられました。それ以来、大紅袍は皇帝への献上茶として珍重されるようになりました。

現在では希少となった大紅袍

現在、大紅袍の原木はわずか3本しか残っておらず、樹齢300年以上とされています。そのため、原木から採れる茶葉は極めて希少で、市場にはほとんど出回りません。

特に初代原木から採れた茶葉は、20gあたり250万円で取引されたという話もあるほど高価です。この価格は、大紅袍の希少性と高い評価を象徴しています。

二次・三次世代の大紅袍

原木から株分けされた二次・三次世代の茶木から採れる茶葉は、比較的手に入りやすい価格で提供されています。これらは「小紅袍」とも呼ばれ、原木の特徴を受け継ぎつつ、幅広い層の茶愛好家に親しまれています。

大紅袍の味わいと香り

大紅袍は、その味わいと香りが特別な理由で評価されています。

味わいの特徴

大紅袍の味わいは、焙煎による香ばしさとほのかな甘みが調和した深みのあるものです。滑らかな口当たりとともに、飲んだ後に広がる豊かな余韻が特徴です。この「岩韻」と呼ばれる後味は、まさに武夷山の環境が生んだ芸術ともいえます。

香りの特徴

香ばしい焙煎香に加え、茶葉からはほのかな花や果実を思わせる香りが漂います。これらが複雑に絡み合い、飲むたびに新しい発見を楽しめるのも大紅袍の魅力のひとつです。

大紅袍の淹れ方と楽しみ方

大紅袍を最大限に楽しむためには、適切な淹れ方が重要です。

おすすめの淹れ方

1.茶葉の量:3~5g

2.お湯の温度:95℃程度

3.抽出時間:30秒~1分(短時間で数回淹れる工夫茶がおすすめ)

大紅袍は数煎楽しむことができ、煎を重ねるごとに風味の変化を味わえます。

大紅袍は、焼き菓子やナッツ類など、香ばしさを引き立てる軽食と相性が良いです。また、フルーツタルトやチョコレートとも驚くほどの調和を見せます。

大紅袍の選び方

市場には大紅袍と称するさまざまな茶葉が出回っていますが、本物の品質を見極めるためには以下のポイントを押さえることが重要です。

1.産地の確認:武夷山産であることが大前提。

2.香りと味わい:焙煎香がしっかりしているものを選ぶ。

3.信頼できるショップ:評判の良い専門店や茶荘で購入するのがおすすめです。

まとめ:岩茶の王様「大紅袍」を味わう

大紅袍は、香り、味わい、そして歴史が織り成す特別なお茶です。その希少性と高い評価から「岩茶の王様」として君臨しています。伝説や背景を知ることで、より深くその魅力を楽しむことができるでしょう。

二次・三次世代の大紅袍も、岩韻を感じられる貴重な体験を提供してくれます。ぜひ一度、大紅袍の奥深い世界を味わってみてはいかがでしょうか?

コメント

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