中国茶の 白茶 とは?その歴史と魅力、美味しい飲み方を徹底解説

中国茶には発酵の度合いによってさまざまな種類があります。その中で、ほんの少しだけ発酵させた 白茶 は、淡い水色とまろやかな甘みが特徴です。本記事では、白茶の特徴や入れ方、飲み方についてわかりやすく解説します。

白茶とは?中国茶の中でも特別な存在

そもそも中国茶は、茶葉の発酵度合いによって6つの種類に分類されています。

黒茶や紅茶は発酵度合いが高く、緑茶は発酵がまったく行われていません。

これら6種類の中国茶は「六大分類」と呼ばれています。さらに、ジャスミン茶などの「花茶」を加えた7種類で紹介されることも多くあります。

この中で白茶は、茶葉をほんの少しだけ発酵させた半発酵茶として分類されます。あるいは「弱発酵茶」や「微発酵茶」と呼ばれることもあります。

白く美しい産毛が残っているから白茶

白茶という名前は、その見た目と製法に由来します。
白茶には新芽が使われ、その新芽には「毛茸(もうじ)」と呼ばれる白い産毛が残っています。
中国茶の製造工程では、茶葉を揉みこむ工程(揉捻)があることが多いのですが、せっかく白く美しい産毛が残っている新芽なのに強く揉み込んだりすると潰れて台無しになってしまいますよね。ですから、白茶の製造ではこの揉捻という工程は行いません。
揉捻を行わずに加工された新芽は、摘み取った時の状態が自然な形で残っています。潰れずに残った毛茸(産毛)が白く美しく見えるため、この製法で作られるお茶は「白茶」と呼ばれています。

白茶の歴史と産地

白茶の起源は古代中国に遡ります。歴史書には唐代(618~907年)にすでに白茶の記録があるとされ、皇帝への献上品として扱われたとも伝えられています。

白茶は「萎凋」と「乾燥」のわずか2つの工程で作られるシンプルな製造方法が特徴の中国茶であるため、自然発生的なお茶として長い歴史があると思われがちですが、実際には比較的新しい歴史を持ちます。本格的に広まったのは明代(1368~1644年)以降に福建省で始まったとされています。

当初は地元の茶葉の芽を使って作られていましたが、商品価値はあまり高くありませんでした。しかし、1885年に「福鼎大白茶」という優良品種を用いた製法が確立され、現在のような白茶の生産が始まりました。

2000年代には、白毫を多く含む工芸茶が一時的に生産され、見た目の美しさと茶葉の品質を融合させたユニークな製品が話題を集めました。しかし、この流行は2010年代後半には下火となり、新たなトレンドが生まれました。

2010年代後半以降、長期間熟成された老白茶(陳茶)が人気を集めるようになりました。この流行により、多くの白茶が固形茶の生産に利用されるようになり、熟成された老白茶の価値が広く認められ、非常に高値で取引されています。

また、この固形茶の製法は、雲南省の普洱茶から模倣されたものであると言われています。

福建省の福鼎(ふくてい)市で作られる「福鼎大白茶」と、福建省の政和県で作られる「政和大白茶」が代表的な品種です。また、白茶は自然そのものを味わえる中国茶として知られています。収穫後の加工が極めてシンプルで、酸化や発酵をほとんど行わないため、茶葉本来の自然な味わいと香りを楽しむことができます。他の中国茶と比較すると、白茶は手間をかけず自然乾燥で仕上げるのが特徴です。この工程により、茶葉に含まれる酵素や栄養成分がほぼそのまま残り、健康効果が期待されています。

白茶の代表的な種類は?

白茶の代表的な種類には、白毫銀針、白牡丹、寿眉などがあります。

また、白毫銀針、白牡丹、寿眉、緑茶の緑雪芽、紅茶の白琳工夫は、ほとんど同じ茶種である「福鼎大白茶」から作られます。品質がやや劣るものは「福鼎大毫茶」と呼ばれる茶種から作られます。これら二つの茶種は見分けがつかないほど似ており、芽が白い産毛で覆われているのが特徴的です。

白茶の中でも、芽だけを摘むのが「白毫銀針」、芽と葉を一緒に摘むのが「白牡丹」や「寿眉」です。これらの違いは、主に摘む時期や畑のランクなどによるものです。茶木や製法に共通点があるため、それぞれの茶には微妙な風味の違いが現れます。

白毫銀針

白毫銀針は、白っぽい茶葉の芯芽である「白毫」を使った白茶です。芯芽だけを使用するのが特徴で、白茶の中でも最高級品とされています。白毫には「毛茸」と呼ばれる白い産毛が密集しており、お茶を淹れると毛茸が水面に浮かび、白くキラキラと輝くように見えます。この最上級の白茶は、すべて繊細な芯芽から作られています。柔らかい甘みと花のようなフローラルな香りが特徴で、少量の茶葉でも濃厚な味わいを楽しむことができます。

この、茶芽の表面を覆う白毫のことを福建語では「パーホウ」と呼びます。この産毛の量が多い茶葉ほど高品質とされ、高い評価を受けます。

また、紅茶の等級を表す「ペコ」という用語も、福建語の「パーホウ」に由来していると考えられています。

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白牡丹

白牡丹は、新芽(芯芽)と若葉がバランスよく含まれる白茶で、「一芯二葉」で摘み取られるのが特徴です。一芯二葉とは、新芽とその下の2枚の若葉を一緒に摘み取ることを指します。白牡丹は、コストパフォーマンスが良く、芳醇な香りと程よい渋みが魅力です。さらに、さわやかな香りやまろやかな甘みを楽しめる点も特徴的です。新白茶としてフレッシュな風味を楽しむことも、陳白茶として熟成された味わいを堪能することもできる、幅広い楽しみ方ができる白茶です。

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寿眉

寿眉は、葉の割合が多い白茶で、最も手頃な価格帯のお茶として親しまれています。しっかりとしたコクと優しい甘みがあり、気軽に日常で楽しむのに最適です。この白茶は、白毫銀針で芯芽を摘んだ後に残る「一芯二葉」や「一芯三葉」を使用して作られます。そのため、ほのかな甘みとフレッシュな香りが感じられ、あっさりとした飲みやすさが特徴です。気軽に楽しみたいときや白茶を初めて試す方にもおすすめです。

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茶葉の熟成

白茶はプーアル茶と同様に、保存することで熟成が進むお茶です。適切な保存条件下で熟成を行うと、白茶の風味や香りが劇的に変化し、新たな魅力が引き出されます。

茶葉を熟成させたものを陳茶と言い、白茶は熟成による味の変化が楽しめる珍しいお茶です。

熟成を重ねた白茶は、蜜やブドウ、乾燥杏のような甘い香りを持つようになります。これにより、新茶とは異なるまろやかで深みのある味わいを楽しむことができます。熟成の過程でタンニンが分解され、渋みが和らぐため、飲みやすさも向上します。中国では、白茶が熟成できるという概念は近年になって急速に発達しました。これにより、白茶の保存方法や熟成技術が注目され、白茶の新たな楽しみ方として広がっています。

熟成に必要な保存条件

白茶を熟成させるには、以下のような適切な保存条件が必要です

  1. 低湿度 湿気を避けることでカビや劣化を防ぎます。
  2. 無酸素環境 酸化を最小限に抑え、風味の変化を穏やかに進めます。
  3. 暗所での保存 光による劣化を防ぐため、直射日光を避けた場所で保存します。

これらの条件を守ることで、白茶は理想的な熟成を迎え、独特の甘さや香りが引き出されます。

白茶の特徴

白茶の特徴をいくつか解説します。

作り方・製法がシンプル

・一般的なお茶(緑茶など):殺青→揉捻→乾燥
・白茶:萎凋→乾燥
一般的なお茶では、高温で茶葉を炒ったり蒸したりする「殺青」と、茶葉に加圧しながらよく揉む「揉捻」という2つの製造工程があります。これらはお茶の味や香りを決める重要なプロセスになります。
白茶を作る際は、萎凋と乾燥のみで殺青と揉捻はありません。萎凋とは、茶葉の中に含まれる水分をしっかり抜き、しおれさせることです。風通しの良い場所に茶葉を広げてしばらく置いておくと、茶葉の水分が抜けてしおれてきます。
それとともに酸化酵素が活性化し、「萎凋香」という花のような甘い香りが生まれます。

緑茶などは、殺青や揉捻によって茶葉がギュッと曲がった形になります。
しかし、白茶は揉まずに作られるため、茶葉本来の自然な形のままになるのが特徴です。

前述のとおり、白茶では殺青で熱を加える工程がなく萎凋のみであるため、甘い独特な香りがあります。
さらに長期間熟成すると、蜜や花に似た濃厚な甘い香りが生まれます。

白茶の美味しい淹れ方

白茶の飲み方には特に厳密な決まりはなく、質の良い茶葉であればシンプルな方法でも美味しく淹れることができます。ただし、質の低い白茶や二番茶・三番茶から作られたものでは、渋みが強いため、お湯の温度を低めに設定するなど慎重な淹れ方が求められます。一方で、高品質な一番茶の白茶であれば、3gの茶葉に対して沸騰したお湯を注ぎ、20~30秒ほど浸出するだけで十分に美味しいお茶を楽しむことができます。2煎目以降は数秒間の浸出で十分です。

また、白茶は冷水で抽出する水出しもおすすめです。5gの茶葉を1リットルの水に入れ、冷蔵庫で数時間静置することで、香り高くさっぱりとした味わいを引き出せます。この方法では、熱によるダメージがないため、冷蔵庫で数日間保存しながら楽しむことができます。

白茶を淹れる際の適切な温度や時間は茶葉の種類や製品によって異なりますが、一般的には70~80℃のぬるめのお湯を使うと、繊細な香りや甘みを損なうことなく引き出せます。茶葉は2~3gを目安に使い、1回目は約2分、2回目以降は少しずつ浸出時間を延ばすことで、異なる風味を楽しむことができます。70~80℃のお湯を使い、5~7分ほど浸出させると、白茶特有の甘くフルーティーな味わいが際立ちます。

また、熱湯を使う場合は、一度10秒ほどお湯を注いで捨てる「洗茶」を行い、その後再度熱湯を注いで淹れる方法が一般的です。この手法は中国茶の伝統的な淹れ方で、茶葉の表面を洗いながら香りを引き出します。

さらに、白茶は繊細な香りを持つため、ローズや他のお茶とブレンドするのもおすすめの楽しみ方です。このように、白茶はその品質や淹れ方によってさまざまな風味や飲み方を楽しむことができるお茶です。

白茶のカフェイン含有量

白茶にはカフェインが含まれていますが、緑茶や紅茶と比べるとその量は少なめです。しかし、白茶の中でも茶葉の種類によって含有量は異なります。

例えば白毫銀針という種類は新芽だけを使用するため、白茶の中でも特にカフェインが多いとされています。妊娠中や授乳中の方、またカフェインの摂取を控えたい方は、飲み過ぎに注意してください。

白茶は繊細な風味と飲みやすさが魅力ですが、体調やライフスタイルに合わせて適量を楽しむことが大切です。

白茶の楽しみ方:日常生活への取り入れ方

白茶は、季節やシーンを問わず楽しめる万能なお茶です。夏は冷茶としてさっぱりとした味わいを、冬は温かいままでほっと一息つけるリラックスタイムを演出してくれます。また、軽いお菓子やサラダなどの食事とも相性が良いため、ティータイムにもバッチリです。

まとめ:白茶の魅力をもっとたのしむ

白茶は、初めて飲む方にも親しみやすいですが、加工がシンプルな分、原料の質が味を大きく左右するお茶です。そのため、質の良い茶葉を選ぶことが大切です。また、白茶は新茶の状態で楽しむだけでなく、熟成させることで個性を高めることができます。手元の白茶に満足できない場合、3~7年ほど保存することで、香りや味わいが変化し、より深い風味を楽しむことができます。熟成させることで、白茶特有のまろやかさや甘みが引き立ち、独特の魅力が生まれます。

さらに、白茶を数年熟成させたものは贈り物としても人気があり、その価値は年々高まるとされています。日常の中に取り入れるだけでなく、特別なシーンにもぴったりです。

ぜひお気に入りの白茶を見つけて、その奥深い世界を堪能してみてください。

 

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