白牡丹 (はくぼたん/バイムーダン)は、中国福建省を中心に生産される白茶の一種で、白茶の中でも特にポピュラーな品種です。茶葉の形が美しい牡丹の花を思わせる、柔らかな風味をもった人気の高いお茶です。
白牡丹とは?
白牡丹は、日本ではあまり馴染みがないものの、香港や東南アジアでは広く親しまれている白茶の一種です。

白牡丹の特徴
中国茶の中で白茶といえば、はじめに連想されるのは白毫銀針ではないでしょうか。
白茶の最高級品である白毫銀針が新芽のみを使用するのに対し、白牡丹は一芯二葉(新芽とその周囲の2枚の葉)を摘むのが基本です。この摘み方により、芽の繊細な甘みと葉の持つほのかな渋みが調和し、風味豊かなお茶が作られます。

また、白牡丹に使用される茶葉は、福建省南平市建陽区などで栽培される大白種や水仙種が一般的で、芽芯、一葉、二葉すべてが白い産毛に覆われていることから「三白」とも呼ばれています。
白牡丹は、香りの良さで広く知られています。飲み口は軽やかで、さわやかな甘みとクセのない味わいが特徴です。その一方で、しっかりとしたコクや深い甘みも感じられます。
その甘みは「花の香り」と表現されることも多く、飲む際にふんわりとした芳香が広がります。また、ヨーロッパでは「白い紅茶」とも呼ばれ、紅茶に似た風味があることも人気の理由の一つとなっています。
白毫銀針のような繊細さを持ちながらも、比較的手頃な価格で手に入るため、日常的に楽しめる白茶としても人気で、中国茶初心者から愛好家まで多くの人に親しまれています。
白牡丹の名前の由来は?
白牡丹という名称の由来には、いくつかの説があります。一つ目は、茶葉の産毛が牡丹の花に見立てられたことによるものです。二つ目は、緑の葉と白い芽が混然一体となった様子が牡丹を連想させるためとされています。そして三つ目は、緑の葉に囲まれた白い芽を牡丹の開花に例えたことに由来するという説です。いずれにせよ、茶葉の見た目の美しさを牡丹の美しさに見立てたことから「白牡丹」という名前がつけられたことは間違いありません。
白牡丹の歴史
白牡丹の歴史は比較的新しく、1922年以前には福建省南平市建陽で初めて作られました。その後、1922年以降に政和県でも製造されるようになり、政和が主な生産地となりました。現在、主な産地は福建省ですが、雲南省の茶葉を原料として作られた白牡丹も市場に出回っています。どちらが優れているというわけではありませんが、白茶は製造工程がシンプルであるため、品質や製造技術が味に大きく影響します。そのため、良質な原料と丁寧な製造技術が不可欠です。
白牡丹はどんな味?
東方美人や紅茶にも似た高い香りを持ち、自然の風味が際立つお茶となっています。また、加工が少ないため茶葉本来の成分が残り、特に抗酸化作用が強いとされています。
ガラス製の器で楽しむのがおすすめ
一般的な白茶と同様に、白牡丹は茶葉が湯の中で舞う様子を楽しむため、耐熱ガラス製のグラスで淹れる方法がおすすめです。茶葉を直接グラスに入れてお湯を注ぐと、茶葉がゆっくりと開き、美しい姿と共に香りが広がります。また、時間をかけて水出しにすることで、甘みが引き立ち、さわやかな風味をより深く楽しむことができます。
製法
白茶の最大の特徴は、その製造工程にあります。茶葉を摘み取った後、静置する時間が長く取られ、他のお茶に見られる「炒青」という釜で炒って加熱する工程や「揉捻」という茶葉を揉みこむ工程がありません。
そのため、摘み取った茶葉そのものの形が自然な形で残っています。芽の部分にも残った毛茸(産毛)が白く美しく見えるため、この製法で作られるお茶を「白茶」と呼ぶようになりました。
さらに、白茶は時間をかけて熟成させることで味が柔らかくなり、その価値が上がることでも知られています。寝かせた白茶はまろやかで奥深い味わいが特徴で、長期熟成されたものほど高値で取引されることがあります。このように、白牡丹は熟成による変化を楽しめるお茶として親しんでいる人も多くいます。
まとめ
白牡丹は、その見た目の美しさとさわやかで甘みのある味わいから、世界中で親しまれている白茶の代表的な品種の一つです。