中国茶の基本 を知りたい人のための入門ガイド|種類・歴史・作り方をやさしく解説

中国茶は、数千年にわたる歴史と豊かな文化を持っており、世界中で愛されている飲み物です。中国では日常の中に深く根ざした存在である一方で、その多様性や奥深さゆえに、国外の愛好者にとってはしばしば「知れば知るほど奥が深い世界」として捉えられています。
この記事では、これから 中国茶の基本 を学びたい方にも、より深く理解を深めたい方にも参考にしていただけるように中国茶の基本を紹介します。

中国茶の基本

中国茶(ちゅうごくちゃ)は、中華人民共和国(中国大陸)および台湾などで生産される茶の総称です。中国本土や台湾に加え、古くから茶の交易で知られる香港でも親しまれており、世界中に多数の愛飲者が存在しています。

製法の違いに基づいて、中国茶は大きく「六大茶類」に分類されます。これには、青茶・黒茶・緑茶・紅茶・白茶・黄茶が含まれており、それ以外にも花茶などの再加工茶が存在します。

台湾では、たとえば凍頂烏龍茶といった地域独自のブランドや、東方美人のような独自製法による製品が展開されており、中国本土産の茶とは区別して「台湾茶」と呼ばれることもあります。

中国茶の分類方法について

中国茶には烏龍茶やジャスミン茶など多くの種類がありますが、すべてはカメリア・シネンシスというツバキ科の常緑樹から作られています。
”Camellia”は、17世紀の植物学者カメルに由来し、”Sinensis”はラテン語で「中国の」を意味しています。
現在では中国に260種以上が存在し、原産地は雲南省とされています。
お茶の飲用の起源には諸説ありますが、薬用として始まったと考えられています。
雲南・四川・貴州には古い茶樹も現存し、その中には樹齢2700年を超えるものもあります。

同じ茶の木でも製法によって風味や香りが大きく変わるため、中国茶は製法によって分類されており、その分類方法は「六大分類」と呼ばれています。
これに加え、基本的な製茶工程を経た茶葉に、香り付けなどの追加の加工を施して作られるお茶のことを「再加工茶」と呼び、大きく分けて七種類の分類法が一般的に知られています。これにはジャスミン茶などが含まれます。

  • 緑茶
  • 白茶
  • 黄茶
  • 烏龍茶
  • 紅茶
  • 黒茶
  • 再加工茶

この「六大分類」は、茶を製法によって分類する方法を指します。この分類法をはじめに提唱したのは、1978年に安徽農業大学の陳椽教授でした。その後、中国国内だけではなく世界的にこの考え方が広まっていきました。

お茶っ子
お茶っ子

樹齢2700年の茶の木って、

もはや飲み物じゃなくて、

ご神体を煎じてるような気がする

「六大分類」の詳しい内容について

もともと陳椽教授が提唱した「六大分類」は茶葉の発酵度合いによってお茶を分類する方法でした。
その後、陳椽教授が提唱した内容をもとにして中国では、お茶の製法の国家標準が定められました。
こうして定められたのが『茶叶分类』という文書です。この文書では、発酵度合いによる分類ではなく製法による分類が行われています。

この『茶叶分类』という文書は、中華人民共和国国家品質監督検査検疫総局と中国国家標準化管理委員会という2つの機関が連名で発行しており、公式かつ法的効力を持つ中国の国家標準(GB規格)として位置付けられています。

また、中国国家標準化管理委員会は、中国国内で定められる各種基準と、ISOなどの国際規格との整合性を管理しています。

そのため、中国国内の規格、あるいは国際的な規格のいずれににおいても、「六大分類」はあくまでも製法に基づく分類であり、発酵度や水色(すいしょく)といった要素は分類基準ではないと言うことができます。

実際に『茶叶分类』の記述がどんなものかを確認するために以下に原文の一部を引用します。

2014年10月に施行された中国国家標準『茶叶分类』(GB/T 30766-2014)では、各茶類について以下のような定義がなされています。(日本語訳は私が付け加えたものです)

2.1
鮮叶fresh leave
从适制品种山茶属茶种茶树(Cumellia sinensis L.O.kunts)上采摘的芽、叶、嫩茎,作为各类茶叶加工的原料。

《新鮮な茶葉 適した品種のツバキ属チャ種の茶樹(Camellia sinensis L.O. Kuntze)から摘み取った芽、葉、若い茎で、各種茶葉の製造に用いられる原料。》

2.2
茶叶 tea
以鲜叶为原料,采用特定工艺加工的、不含任何添加物的、供人们饮用或食用的产品。

《茶葉 新鮮な茶葉を原料とし、特定の製法によって加工された添加物を一切含まない、人々が飲用または食用とするための製品。》

2.9
绿茶 green tea
以鲜叶为原料,经杀青、揉捻、干燥等加工工艺制成的产品。

《緑茶 新鮮な茶葉を原料とし、殺青(さっせい)・揉捻(じゅうねん)・乾燥などの製造工程を経て作られた製品。》

2.10
红茶 black tea
以鲜叶为原料,经萎调、揉捻(切)、发酵、干燥等加工工艺制成的产品。

《紅茶 新鮮な茶葉を原料とし、萎凋(いちょう)・揉捻(または切断)・発酵・乾燥などの製造工程を経て作られた製品。》

2.11
黄茶 yellow tea
以鲜叶为原料,经杀青、揉捻、闷黄、干燥等生产工艺制成的产品。

《黄茶 新鮮な茶葉を原料とし、殺青・揉捻・悶黄(もんおう)・乾燥などの製造工程を経て作られた製品。》

2.12
白茶 white tea
以特定茶树品种的鲜叶为原料,经菱凋、干燥等生产工艺制成的产品。

《白茶 特定の茶樹品種の新鮮な葉を原料とし、萎凋・乾燥などの製造工程を経て作られた製品。》

2.13
乌龙茶 oolong tea
以特定茶树品种的鲜叶为原料,经萎凋、做青、杀青、揉捻、干燥等特定工艺制成的产品。

《烏龍茶 特定の茶樹品種の新鮮な葉を原料とし、萎凋・做青(さくせい)・殺青・揉捻・乾燥などの特定工程を経て作られた製品。》

2.14
黑茶 dark tea
以鲜叶为原料,经杀青、揉捻、渥堆、干燥等加工工艺制成的产品。

《黒茶 新鮮な茶葉を原料とし、殺青・揉捻・渥堆(あくたい)・乾燥などの製造工程を経て作られた製品。》

2.15
再加工茶 reprocessing tea
以茶叶为原料,采用特定工艺加工的、供人们饮用或食用的产品。

《再加工茶 茶葉を原料とし、特定の工程を用いて加工された、飲用または食用を目的とした製品。》

『茶叶分类』(GB/T 30766-2014)より

とてもシンプルな定義ですよね(中国語で書かれているからひるんでしまうかもしれませんが)どれも製法についてのみ書かれています。これらの記述から、いわゆる「六大分類」とは製法による分類の方法だということがお分かりいただけたと思います。

さらに、ISO(国際標準化機構)が定める各種のお茶の定義も製法に基づいて分類されており、これらの定義は、茶葉の生産、研究、教育、貿易、検査など、あらゆる公的かつ国際的な場面で広く活用されています。

3.13
green tea
tea (3.2) derived solely and exclusively, and produced by acceptable processes, notably enzyme inactivation and commonly rolling, shaping or comminution, followed by drying, from the tender leaves, buds and shoots of varieties of the species Camellia sinensis (L.) O. Kuntze, known to be suitable for making tea for consumption as a beverage [SOURCE:ISO 11287:2011, 3.1, modified — “shaping” added.]

ISO 20715:2023より

 

中国茶 についての用語

中国茶は、その豊かな歴史と多彩な風味で世界中の人々を魅了しています。この多種多様な味わいは、各茶葉の独特な製造工程の違いから生まれます。これらを知る上で欠かせない、よく使われる用語について紹介します。

揉捻

揉捻とは、製茶工程の一つで茶葉を揉む作業です。
目的はお茶の種類によって異なりますが、主に以下の効果があるといえます。
・茶葉の形を整える
・細胞壁を破壊して成分の抽出を促す
・殺青前に行う場合は、ポリフェノールを酵素と接触させ発酵を促す

中国茶が日本の煎茶よりも煎が効く(何煎も楽しめる)のは、揉捻による組織破壊が穏やかで、成分がゆっくり抽出されるためです。
一方、手揉みで針状に仕上げるような場合は、組織が強く壊れているので、成分がすぐに抽出されやすくなります。

萎凋

白茶・烏龍茶・紅茶の製造で行われる工程で、生葉の水分を調整と、酵素の活性化を目的として行われます。
萎凋には、日光に当てる「日光萎凋」と、屋内で行う「室内萎凋」があり、天候や環境に左右されやすいため、機器を使って行う例も増えています。

殺青

緑茶・黄茶・烏龍茶・黒茶の製造で行われる工程で、茶葉に含まれる酸化酵素の働きを加熱によって止め、香味や色を安定させるために行われます。

日本の煎茶では蒸気による蒸しが一般的ですが、中国や台湾では釜炒り方式が主流です。
この殺青方法の違いは香りに大きく影響し、釜炒りの場合は茶葉自身の芳香成分が引き出されるため、中国緑茶特有の香りを生み出す要因のひとつとなっており、さらに以下のように細かく分かれています。

蒸青

蒸気による殺青方法です。日本茶はこの方法で作られていますが、中国茶ではあまり一般的な方法ではありません。

炒青

釜炒り後、そのまま釜の中で乾燥まで仕上げる方法です。茶葉が直接的な熱にさらされることで成分が変化し、香ばしい香りを持つお茶になります。

烘青

釜炒り後、焙籠や乾燥機などで輻射熱を利用して乾燥させる方法です。茶葉が直接高温の釜に触れないため、花のような香りが残るタイプになります。

晒青

釜炒り後、天日干しによって乾燥させる方法です。太陽に晒すことで、天日独特の香味が加わります。黒茶の製造の原料として用いられることがあります。

做青

烏龍茶に特有の工程です。
茶葉を揺らして(揺青)、葉の周縁を軽く傷つけることで、内部の水分移動を促しつつ、発酵を進めていく工程です。

中国の国家標準では、「生葉の縁を部分的に傷つけ、含有されるポリフェノール類の一部を酸化反応を促進し、緑の葉に赤みを帯びた縁(緑葉紅辺)を形成するプロセス」と定義されています。

この工程は、揺青と静置(休ませる)を交互に繰り返すことで、茶葉中の水分の蒸発と酸化(発酵)の進行を細かくコントロールし、烏龍茶特有の香りや味わいを形づくる、非常に重要なステップです。

悶黄

黄茶の製造において特有の工程です。
茶葉を高温多湿の環境または高温状態に置き、湿熱作用および乾熱作用によって葉緑素の分解を促します。
この工程によって、黄茶の特徴である「黄葉黄湯」の状態に仕上がり、独特のまろやかな風味と香りが生まれます。

具体的には、殺青(酵素の失活)と揉捻(茶葉を揉む)を行った後、茶葉を湿った布や紙で包み、一定の温度と湿度のもとで数時間から数日間静置します。この間に、茶葉内のポリフェノールや葉緑素の分解が促され、茶葉と抽出液の色が黄色く変化します。 

発酵

お茶に関する「発酵」とは、茶葉に含まれる酵素が酸化作用を引き起こす過程のことを指すことが多いです。
日本語で一般的に言う「発酵(微生物による分解)」を指す場合は渥堆という工程になります。
「一定の温度・湿度下で、多くの成分(ポリフェノール類など)が酸化反応を起こすことで紅茶が形成される過程」と定義されており、お茶の種類によって酸化反応の度合いが異なります。

渥堆

黒茶の製造に特有の工程です。
元となる茶葉(主に晒青緑茶)に水分を加えて堆積し、湿熱環境下で微生物による後発酵を促します。
空気中に漂う麹菌の仲間などを茶葉に付着させ、温度管理や堆積の高さを調整することで有益な菌を育成します。
このことを、前述した酸化による発酵と区別して、後発酵と呼んでいます
プーアル茶においては、この工程の有無がプーアル熟茶とプーアル生茶の違いとなっています。

中国茶 の種類とその特徴

中国茶の製造工程で使われる用語はまだまだたくさんありますが、よく使われる基本の用語はこのくらいにして、ここからはそれぞれのお茶の具体的な特徴をご紹介していきます。

緑茶

生産量・消費ともにもっとも多いお茶です。
摘み取った茶葉に加熱処理(「殺青」)を施し、酸化発酵を抑制した無発酵茶(または非発酵茶)に分類されます。茶の抽出液(湯色)は、日本の緑茶とほとんど同じような色合いをしています。

中国国内でも最も日常的に飲まれている茶のひとつであり、中国本土における全体の茶消費量の7〜8割を占めています。基本的には発酵を行わないものですが、「雲峰」などの一部の品種では、ダージリンのファーストフラッシュや烏龍茶、紅茶などに見られるような、軽度の発酵(萎凋)を取り入れるケースもあります。

その殺青方法に応じて以下のように分類されます

  • 炒青緑茶:釜で炒ることで加熱処理を行う方法
  • 烘青緑茶:直接火にかけて乾燥させる手法
  • 晒青緑茶:自然の太陽光で茶葉を干す方法
  • 蒸青緑茶:蒸気によって加熱する方式で、日本茶の製法に近い

さらに、炒青緑茶は茶葉の仕上がりの形状により、次のように細分化されます

  • 長炒青:細長い形の茶葉(例:眉茶)
  • 円炒青:丸みのある形状の茶葉(例:珠茶)
  • 扁炒青:平たく扁平な形状の茶葉(例:龍井茶)

かつては、中国における緑茶も蒸青法による製法が主流でしたが、明代以降は炒青法が広く用いられるようになり、現在では蒸青による緑茶は少数派にとどまっています。

また、中国の緑茶は、紅茶よりも早くヨーロッパに輸出された歴史があり、現在でもモロッコ、チュニジア、アルジェリアといった北アフリカの国々では、広く親しまれて飲まれています。

白茶

白茶は、中国茶の中でも生産量が少なく、種類も限られるため、希少価値の高いお茶とされています。製造工程が極めてシンプルであることも特徴のひとつで、中国茶のなかでも特に簡素な製法に分類されます。

このお茶は、若芽や若葉を選んで摘採し、それらを軽く酸化発酵(萎凋)させた後、弱火で丁寧に乾燥させて仕上げます。そのため、弱発酵茶と呼ばれることもあります。揉捻(茶葉を揉み込む)工程は省略されているため、発酵の進行は非常に穏やかです。茶葉の表面に見られる白い産毛(白毫)が特徴であることから、「白茶」という名が付けられました。抽出した茶の水色は金緑色を帯び、摘み取りは一芯一葉で行われることが多く、高級品が多いのも特長です。

摘んだ茶葉は広げて静かに放置され、自然に水分が抜けていきます。この過程を「萎凋(いちょう)」と呼びます。時間をかけて萎凋を進めることで、茶葉内部ではごく緩やかな酸化が起こります。その後、揉みや整形を行うことなく、そのままの形で乾燥させるため、茶葉本来の自然な姿が保たれます。

白茶の製造は極めて単純な工程で構成されているため、人為的な介入が少なく、自然環境(気候や湿度)や茶葉の状態が仕上がりに大きく影響を及ぼします。そのため、製茶における職人の経験や判断力が品質を左右する重要な要素となります。

味わいはとても繊細で優しく、果物を思わせるようなほのかに甘い香りが漂います。多くの白茶は新芽が用いられますが、これらの芽には白い産毛が生えている品種が多く、この見た目にちなんで「白茶」と名付けられたのです。

黄茶

黄茶は、荒茶製造工程中に軽度の発酵を行ったお茶です。弱後発酵茶と呼ばれることもあります。
若芽を摘み取った後にじっくりと加熱処理を行い、酵素の働きを活かした酸化発酵を経て、さらに「悶黄」と呼ばれる独自の熟成工程を通して仕上げられる中国茶です。茶葉および抽出液の色が薄い黄色を帯びることから「黄茶」と名付けられています。年間の生産量は非常に少なく、数百キロ程度に限られるため、六大茶類の中でも最も希少性の高い種類とされています。

黄茶の製造における大きな特徴は、一般的な中国緑茶とは異なる加熱方法と、牛皮紙で茶葉を包んで行う「悶黄」工程にあります。加熱は低温から始まり、徐々に温度を上げていき、再び温度を下げるという独特な温度調整によって行われます。この工程により、茶葉内に含まれる酵素が穏やかに作用し、自然な酸化発酵が促進されます。

一方で、中国の緑茶では、高温に熱した釜に茶葉を直接投入して酵素の働きを素早く止めるのが一般的であり、基本的には酸化発酵は起こりません(ただし、一部の緑茶では萎凋を行う場合もあります)。黒茶を除いた他の発酵茶、たとえば烏龍茶(青茶)なども、酵素の酸化反応を利用して製造されており、手法は異なっても、いずれも酵素による発酵茶に分類されます。また、緑茶の中に萎凋を施すものがあることを踏まえると、黄茶は発酵茶の中で唯一萎凋を行わないという点でも特異な存在です。

こうして、適度に酸化発酵した茶葉は、次の段階として黄茶特有の熟成工程である「悶黄」に移ります。この工程については、しばしば微生物による発酵と誤解されることがありますが、実際には微生物は関与しておらず、高温多湿な環境下で茶葉内部のポリフェノールや葉緑素(クロロフィル)などの成分が非酵素的に酸化される過程です。

その結果、茶葉の色は緑から徐々に透明感のある黄色へと変化し、茶の水色も淡い黄色を帯びるようになります。こうした色調の変化が、「黄茶」という名称の由来となっています。

代表的な銘柄には、君山銀針(くんざんぎんしん)、霍山黄芽(かくざんこうが)、蒙頂黄芽(もうちょうこうが)などがあり、いずれも品質の高さで知られています。これらの黄茶は清の時代の皇帝にも愛飲されていたと伝えられ、現在においても中国茶の中で特に希少価値の高い品種として位置づけられています。市場では、100グラムで1万円を超える高級品も珍しくありません。

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烏龍茶

烏龍茶(ウーロン茶)は中国茶の一種で、「半発酵茶」や「青茶」(せいちゃ)とも呼ばれることもあります。

中国語で「青」は「黒みを帯びた藍色」のこと指しており、発酵が進む過程で茶葉が銀青色(暗い藍色)になることから、「青茶」の名が付けられました。
また、丁寧に揉捻されているため、茶葉の形状が球状またはねじれた棒状になっているものが多いです。

これらのことから、茶の色が烏(からす)のように黒く、形が龍のように曲がりくねっているこのお茶を「烏龍茶」と呼ぶようになったと言われています。

品種が非常に豊富で、800種類以上存在するといわれています。

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紅茶

中国紅茶は、緑茶とは反対に「殺青(さっせい)」と呼ばれる加熱処理を一切施さず、茶葉内に含まれる酵素の活性を残したまま発酵を進めて作られます。中国で生産される完全発酵茶で、世界中で高く評価されています。その歴史は17世紀に遡り、福建省武夷山で生まれた「正山小種(ラプサンスーチョン)」が最初の紅茶とされています。中国紅茶は、一般的に渋みが少なく、甘みと芳醇な香りが特徴です。

「中国からイギリスへの海上輸送中に、インド洋の高温多湿な環境によって緑茶が自然発酵し紅茶になった」とする説が語られることがありますが、これは誤解に基づく俗説です。というのも、緑茶は製造時にすでに殺青処理を受けており、酵素は失活しているため、輸送中に自然発酵が起こることは考えにくいのです。実際には紅茶は海上輸送の途中にできた偶然の産物などではなく、イギリスへの輸出が本格化する以前から、中国国内ですでに製造が行われていました。

中国における紅茶の歴史は、緑茶と比較するとやや新しいものの、明代にはすでに紅茶の製造が始まっており、清代には「小種紅茶」や「工夫紅茶」などの代表的な紅茶が誕生しています。

現在、中国で生産されている紅茶は、主に以下の3つの種類に分類されます

  • 工夫紅茶(こうふこうちゃ)
    「工夫」とは「手間ひまをかける」という意味を持ちます。さまざまな紅茶を組み合わせて、香りと味の調和を追求したブレンド紅茶であり、1851年に最初の製品が誕生しました。代表的な銘柄に祁門紅茶(キームンこうちゃ)があります。
  • 小種紅茶(しょうしゅこうちゃ)
    この紅茶は18世紀にイギリスで出版された『All About Tea』にも「スーチョン(Souchong)」として紹介されています。福建省武夷山市星村鎮が主な産地であり、「星村小種」や「正山小種」の名で知られています。また、政和県で生産されたものは「政和小種」と呼ばれることもあります。製造過程で松葉を用いて燻すため、特徴的なスモーキーな香り(薫煙香)が漂うのが特徴です。
  • 紅碎紅茶(こうさいこうちゃ)
    「分級紅茶」とも呼ばれ、「工夫紅茶」を基本に、茶葉の大きさや形状によって等級が分類されたものです。等級は上位から「葉茶」「碎茶(そいちゃ、細かい葉)」「片茶」「末茶」に分かれており、これらは国際的な紅茶の等級である「フラワリー・オレンジペコー」「オレンジペコー」「ペコー」「ブロークン・ペコー」などに相当します。
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黒茶

後発酵茶と呼ばれることもあります。
完成した茶葉(主に晒青緑茶)に微生物を植え付け、後発酵させたお茶です。長期保存ができる特徴があり、年代物には高い価値が付けられ、ヴィンテージワインのように楽しまれています。
代表的な黒茶には以下のものがあります

  • 普洱茶(プーアル茶):雲南省で生産され、長期熟成により品質が向上するとされています。
  • 六堡茶(ろくほうちゃ):広西チワン族自治区の六堡地区で生産され、独特の「陳香」と呼ばれる熟成香が特徴です。
    黒茶は、長期保存や熟成により風味が変化し、健康効果も期待されることから、多くの愛好家に親しまれています。
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再加工茶

再加工茶とは、六大分類で規定される基本的な製法によって作られた荒茶に、さらに加工を加えた茶のことです。現在は「再加工茶」として明確に定義され、以下の4種類に分類されます。

花茶

天然の花の香りを茶葉に移したもので、代表的なのはジャスミン茶。香り付けには「窨花(いんか)」という工程が用いられ、香りの強さはその回数により異なります。最高級品では6回の窨花と1回の「提花」を行う例もあり、花の鮮度や種類、香りと茶のバランスが品質を左右します。

緊圧茶

茶葉を蒸気で蒸した後、圧力をかけて成形したもの。保存性や運搬性を高める目的で作られ、黒茶を中心に、白茶・烏龍茶・紅茶にも応用されています。蒸すことで成分が変化し、発酵や熟成にも影響を与えます。

袋泡茶(ティーバッグ)

茶葉を細かく加工し、不織布などの濾過材に包んだ製品。抽出の速さや利便性を目的としており、機能性を重視した現代的な製品です。

粉茶

茶葉を粉末状に加工したもので、即溶性の「クイックパウダーティー」や抹茶などが含まれます。利便性に優れる一方で、嗜好品としての利用はやや限定的です。

中国茶の歴史

中国において「茶」という言葉は、「茶(ちゃ/chá)」のほかに「茗(めい/míng)」とも呼ばれています。唐代の茶聖・陸羽によって著された『茶経』によれば、茶の飲用は神農の時代にまでさかのぼるとされます。また、漢代の詩文にはすでに茶に関する文字が登場しており、それが現存する茶に関する最古の文献として知られています。

当時の茶は現在のような嗜好品というよりは、薬用としての利用が主でした。次第に、それはとろみのある羹(あつもの)のような料理の形でも親しまれるようになります。

本格的にお茶が日常的に飲まれ始めたのは、魏晋南北朝時代のことで、現在の四川省周辺がその発祥地と考えられています。そこから徐々に、茶の文化は中国全土に広まっていきました。

隋や唐の時代になると、茶を火にかけて煮出す方法や、抹茶・煎茶といった多様な飲み方が普及し、同時に茶器の原型とされる多くの道具が生み出されました。唐代にはまた、喫茶の風習が北方民族にも広まり、「茶馬交易」と呼ばれる、茶と馬を交換する貿易が始まりました。茶はこの頃から経済的にも重要な物産として扱われるようになります。

宋代に入ると、製茶技術の革新が進み、茶の種類は飛躍的に増加します。同時に「闘茶」と呼ばれる競技的な遊びも生まれ、茶文化は一層の発展を遂げました。希少な新茶は皇帝に献上されるなど、茶は国家的にも重要な役割を担いました。今日でも、高級な新茶は国家指導者や外国からの賓客の接待用として北京へ届けられることがあります。

明代には、1391年(洪武24年)に皇帝・朱元璋が福建省において団茶の製造を禁止する政策を打ち出し、喫茶法に大きな変化が訪れます。これを機に、固形茶は廃れ、茶葉をそのまま湯に浸して楽しむ「泡茶法」が主流となりました。それに伴い、従来使用されていた点茶器は次第に使われなくなり、茶壺など泡茶に適した器具の重要性が増していきます。

清の時代には、茶器の形状や機能が洗練され、現代の茶器とほぼ同じ形式にまで進化を遂げました。こうして中国の茶文化は、長い歴史を通じて現在のかたちへと発展していったのです。

まとめ

中国茶は、その膨大な種類と繊細な製法、そして何千年にもわたる歴史の積み重ねによって、単なる嗜好品を超えた「文化」として今も息づいています。緑茶や烏龍茶のような日常的なお茶から、白茶・黄茶・黒茶のような希少性の高い茶、さらに花茶や緊圧茶などの再加工茶に至るまで、それぞれが独自の製法と風味を持ち、中国の土地と人々の営みを反映しています。
中国茶の魅力は知れば知るほど深まっていきます。この記事が中国茶をより深く理解するために役立てたら嬉しいです。

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